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Sus8システム
2026/09/08
コカ・コーラ、マレーシアの小売店にAI発注提案 商品と数量を示し、判断は店舗に
「何を、いくつ仕入れるか」を発注画面で支援
次の仕入れでは、いつもの商品を同じ数量だけ注文すればよいのでしょうか。飲料を扱う小売店にとって、過去の売れ行きに加え、季節や天候を見ながら発注量を決める作業は日常的な判断です。コカ・コーラはマレーシアで、この判断を支援するAI機能「Perfect Basket」を、事業者向けの注文プラットフォーム「Coke Buddy」に組み込んでいます。特徴は、購入候補の商品だけでなく、注文数量まで提案する点です。

Coke Buddyは、小売店がアプリ、ウェブサイト、WhatsAppから商品を注文できる仕組みです。WhatsAppはメッセージアプリで、ここでは注文窓口の一つとして使われています。店舗ごとの注文提案や注文状況の追跡にも対応し、コカ・コーラによると、マレーシアの約3万9,000店舗を支えています。ただし、この数字はプラットフォーム全体の対象店舗数であり、Perfect Basketの利用店舗数を表すものではありません。



Perfect Basketは、店舗が注文を確定する前に、おすすめの商品と数量を提示します。担当者は内容を確認し、何を購入するかを自分で決められます。AIが仕入れを自動的に確定する運用ではなく、発注のたたき台を用意する役割です。企業のAI活用という観点では、予測を表示するだけで終わらせず、日々の注文操作につなげている点が注目されます。店舗にとっての価値は、提案の存在そのものよりも、発注時に検討すべき内容をどこまで具体化できるかにあると考えられます。
過去の注文に天候や類似店舗の傾向を重ねる仕組み
Perfect Basketを支えるのは、コカ・コーラの「Central Recommendation Engine」です。店舗の過去の注文、注文頻度、季節性、天候、似た事業者の購買パターンを分析し、注文内容の提案につなげます。Coke Buddyには以前から購入履歴を基に再注文しそうな商品を示す機能がありました。Perfect Basketは、それに複数の判断材料を加え、商品と数量の提案へと広げています。

購入履歴は、その店舗が普段どの商品を扱っているかを把握する手掛かりになります。しかし、過去と同じ注文が、そのまま次回の適量になるとは限りません。一般に、季節や天候は飲料の需要を考える材料になり、注文頻度は仕入れの間隔を捉える助けになります。類似店舗の購買傾向も、自店の履歴だけでは見えにくい商品候補を検討する材料になるでしょう。もっとも、各情報をどのような比重で扱うか、類似店舗を何によって分類するかといった詳細は、今回確認できた情報では明らかにされていません。



生成AIの企業利用が関心を集める中でも、この事例は技術の種類を分けて理解する必要があります。公開された説明が示しているのは、データを分析して発注を勧めるAIの活用です。大規模言語モデルや対話型の生成AIを使っているかは確認できません。注文案を「生成する」という表現だけで、文章や画像を作る生成AIと同じ仕組みだとは判断できないためです。導入を検討する企業にとっては、技術の呼び名以上に、どのデータを使い、どの業務判断を支えるのかを捉えることが実務につながります。
推奨採用率83%は、キャンペーン参加店舗の数字
コカ・コーラは、2026年1月から4月まで実施した「Perfect Basket, Perfect Ride」キャンペーンを受けて、利用状況を公表しました。この施策は、注文時にPerfect Basketの提案を利用するよう小売店に促したものです。マレーシアの4,000超の小売店から、4,500件を超える応募がありました。店舗数と応募件数は別の集計なので、同じ利用規模として扱わないよう注意が必要です。

同社によると、参加店舗の83%がPerfect Basketの推奨を採用しました。この数字からは、キャンペーンに参加した店舗の多くが、提案を注文に取り入れたことが読み取れます。ただし、Coke Buddyが支える約3万9,000店舗全体の採用率ではありません。利用を促す施策の参加者を対象にした結果であり、通常時や未参加店舗でも同じ割合になるかは、この情報だけでは判断できません。



売上に関しても、確認できる範囲を区切って読む必要があります。コカ・コーラは、提案に従った参加店舗では、比較対象となる店舗より売上高の伸びが大きかったと説明しています。しかし、その差の大きさや、個々の提案が売上・在庫に与えた影響を示す詳細データは公表していません。マレーシアのキャンペーン情報には、予測精度、商品の在庫確保状況、在庫水準、物流費の数値も含まれていません。

したがって、83%は提案の受け入れ状況を示す指標として扱うのが適切です。売上への効果を定量的に示した数値でも、在庫管理の改善を証明した数値でもありません。企業が同様の機能を評価する際は、「使われたか」と「経営上の成果が出たか」を分けて確かめる必要があります。
海外での展開実績は、マレーシアの成果と分けて読む
AIによる注文提案は、マレーシアだけの取り組みではありません。コカ・コーラは2024年第1四半期の決算で、同社とボトリングパートナーが世界で約800万の顧客をB2Bプラットフォームに接続し、ラテンアメリカではAIによる注文提案機能が300万超の店舗に届いていると説明しました。ボトリングパートナーは、飲料の製造・充填や流通を担う事業者です。世界の接続顧客数と地域の機能展開店舗数は、対象も意味も異なります。

同社は、こうした仕組みが顧客データ、外部情報、AIを組み合わせ、予測に基づく注文提案を作ると説明しています。2024年当時の最高経営責任者だったジェームズ・クインシー氏は、デジタル注文によって、小売店が営業担当者の訪問を待たずに配送内容を調整できると述べています。注文のデジタル化は、商品の選び方だけでなく、店舗が発注を変更できるタイミングにも関わる取り組みです。



過去の試行では、別の成果も報告されています。2024年第2四半期の決算説明会で同社は、過去の注文や市場データに基づくAIの商品提案を受けた小売店では、初期試行で推奨SKUを購入する可能性が30%超高まったと説明しました。SKUは商品を管理する単位で、飲料なら容量や包装の違いなどを区別する際に用います。この結果は、マレーシアのPerfect Basketに限定したものではありません。

また、最高情報責任者のニーラジ・トルマーレ氏は2025年、米ビジネスメディアFortuneに対し、販売履歴、天候、位置情報を使う別の需要予測プロジェクトで、3カ国の試行店舗の売上がAIを使わない店舗より7〜8%高かったと述べています。いずれも関連する実績ですが、測っている指標も試行条件も異なります。数字をまとめてPerfect Basketの効果とみなすことはできません。
AIが注文案を作っても、営業と配送の役割は残る
Perfect Basketを業務の仕組みとして見ると、注文提案、購入判断、商品の供給は別の役割に分かれています。AIは注文前に商品と数量を勧め、小売店が最終的な購入内容を決めます。注文後の供給は、既存の販売・流通上の取り決めに基づき、Coca-Cola Refreshments Malaysiaまたはそのサプライヤーが担います。注文提案機能が配送業務まで一括して実行するという説明ではありません。

コカ・コーラは、デジタル注文の導入後も営業チームが小売店との関係を維持するとしています。クインシー氏は、AIが注文案を作ることで、受注前の営業担当者が定型的な注文取りに使う時間を減らし、取引先との関係強化や販売拡大に時間を振り向けられると説明しました。ここで示されているのは、注文処理と営業活動の時間配分を変える考え方です。マレーシアで実際に何時間削減できたかという数値は、今回の情報にはありません。



この分担は、日本企業が導入を考える際にも参考になります。一般に、店舗には予定している販促や売り場の変更など、分析用データに十分反映されていない事情があり得ます。提案を確認する人を残す設計なら、そうした事情を購入判断に取り込めるでしょう。ただし、人が確認できるだけで提案の品質が保証されるわけではありません。修正しやすい画面や、必要なときに相談できる窓口も検討事項になります。

実務上は、AIに任せる範囲を「発注案の作成」として具体化し、確定する人と供給する主体を明確にすることが出発点です。コカ・コーラの事例からは、既存の商流を土台に、注文前の判断を支援する機能を加える導入の形が見えてきます。
日本企業が試すなら、採用率と在庫の結果を別々に確かめる
日本の飲料メーカーや卸売業者が同様の仕組みを検討する場合、最初の問いは「どのAIを使うか」だけではありません。発注担当者が困っているのは商品選びなのか、数量の見積もりなのか、それとも注文作業にかかる時間なのかを絞る必要があります。Perfect Basketは商品と数量を同時に提案しますが、自社でも同じ範囲を一度に対象にするべきかは、業務と利用可能なデータを見て判断することになります。

検証では、提案が採用された割合に加えて、その後の結果を追う設計が考えられます。例えば、推奨数量をそのまま注文したのか、担当者が増減したのかを区別すれば、提案がどの程度修正されているかを把握できます。売上だけでなく、欠品や余剰在庫も確認できれば、仕入れを増やした結果をより広く評価できるでしょう。これらは導入時の検証案であり、コカ・コーラがマレーシアで公表した成果ではありません。



比較条件も欠かせません。参加店舗と非参加店舗で、店舗規模、商品構成、販促の有無などが異なれば、売上の差をAIだけの効果として説明するのは難しくなります。試行前に対象店舗と評価期間を決め、何をもって継続利用に進むかを共有しておくと、採用率の高さだけで判断することを避けられます。利用者の反応と事業上の成果を、別々の観点から確認するためです。

Perfect Basketはキャンペーン終了後も利用でき、コカ・コーラは小売店の意見とデータを使ってCoke Buddyと提案機能を改善していく方針です。営業担当者へのアクセスも維持するとしています。日本企業が次に取れる具体的な一歩は、一つの商材や店舗群について、注文履歴と販売・在庫データをどこまで対応付けられるかを確認することです。その上で、発注案の採用状況と欠品・余剰の変化を一緒に追える小規模な試行を設計すれば、自社に必要な支援の範囲を判断しやすくなります。
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