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Sus8システム
2026/10/30
AIニュース
AIエージェントの成否を分ける「導入の専門家」――mondayが社内2,000体の運用から得た答え
AIエージェントの課題は性能から業務変革へ
生成AIをメール作成や要約に使う段階と、自律型AIエージェントを業務プロセスの一部として動かす段階には、大きな隔たりがあります。前者は個人の作業を補助できますが、後者では複数の工程、社内データ、承認ルール、担当者の責任範囲まで見直さなければなりません。業務管理プラットフォームを手がけるmonday.comの共同創業者兼共同CEO、エラン・ジンマン氏は、企業が直面している難しさは技術そのものより、実際のビジネスを変える作業にあると説明しています。



同社がAIワークプラットフォームとして再始動して以降、顧客の関心も変化しました。「AIで何ができるか」より、「投資に見合う成果をどう生み出すか」という相談が増えているといいます。エージェントが処理を実行するたびにトークン利用料が発生するため、デモが動くだけでは十分ではありません。売上への貢献、処理時間の短縮、業務量の増加への対応など、企業が重視する指標に結び付ける必要があります。

自律型エージェントとは、利用者から一度質問を受けて回答するだけのチャット機能ではなく、設定された目的に沿って複数の作業を進める仕組みを指します。ただし、システムが自律的に動ける範囲を広げるほど、既存の手順との衝突や例外処理も増えやすくなります。導入の中心課題は、優れたモデルを選ぶことだけではなく、人間とエージェントが参加する新しい業務フローを設計し、成果を継続的に測れる状態を作ることです。
全社を1週間止めて実施した「Customer Zero」
顧客に業務変革を提案する前に、monday.comは自社を最初の利用者にしました。「Customer Zero」と名付けた取り組みでは、従業員が通常業務を1週間止め、全員でAIエージェントの構築に取り組んでいます。単なる研修ではなく、社内で競いながら実際に使うエージェントを作る形式です。ジンマン氏によると、この期間に3,600体を超えるエージェントが生まれ、そのうち約2,000体が現在も稼働しています。



3,600体という数は、直ちに事業成果を証明するものではありません。それでも、限られた専門部署だけで実験する場合とは異なり、現場の従業員が自分の仕事をエージェント化する機会を持った点には意味があります。日々の業務を知る人ほど、繰り返し発生する作業や、情報の受け渡しが滞る箇所を具体的に把握しているからです。約2,000体が実験終了後も残っているという事実からは、一時的なアイデアコンテストだけでは終わらなかったことも読み取れます。

企業が同様の取り組みを検討する場合、全社の通常業務を停止する方法をそのまま採用する必要はないでしょう。重要なのは、AI活用を情報システム部門だけに閉じず、業務を担当する人が試作と評価に参加できる時間を確保することです。また、作られたエージェントの数だけを成果指標にすると、利用されない仕組みが増える恐れがあります。継続利用の有無、削減できた手作業、出力を人が修正した割合なども併せて確認することで、実務への定着度を判断しやすくなります。
数週間で実務投入を目指すmonday Frontier
社内で得た進め方を顧客向けに展開するため、monday.comは「monday Frontier」という新組織を設けました。マネージドサービスと導入エンジニアを組み合わせ、顧客企業の業務上のボトルネックを探し、数週間でAIプロジェクトを立ち上げることを目指します。ソフトウェアの利用権だけを提供するのではなく、どの業務から着手すべきかを顧客とともに判断し、実装まで支援する構想です。



ここで導入エンジニアに求められるのは、AIモデルに関する知識だけではありません。現場の手順を分解し、どこで情報が入力され、誰が判断し、どの条件で次の工程へ進むのかを把握する力が欠かせません。技術的には自動化できる作業でも、例外が多すぎたり、参照すべきデータが整理されていなかったりすれば、安定運用は難しくなります。反対に、効果の出やすい範囲を見極められれば、小さな導入から検証を始められます。

この動きは、生成AI製品の競争軸が機能一覧だけでは決まりにくくなっていることを示しています。同じプラットフォームを契約しても、業務設計や社内展開の方法によって成果は変わります。そのため、提供企業には製品の操作支援に加え、業務課題を発見し、エージェントの役割を定義し、運用開始後の改善につなげる能力が求められるでしょう。monday Frontierは、AI導入をソフトウェア販売ではなく、変革プロジェクトとして扱う試みと捉えられます。
人とエージェントが同じ業務空間で働く設計
monday.comはブランド名を「monday」へ改め、人間とAIエージェントが一つのワークスペースを共有する製品像を打ち出しています。名称変更には、従来の業務管理ソフトウェアという枠を越え、人とエージェントが協働する基盤を目指す姿勢が表れています。ただし、ジンマン氏はAIが人間を職場から追い出すという見方には否定的です。事業上の行為について責任を負うのは人間であり、AIがその責任を引き受けることはないと述べています。



この考え方では、AIの役割は人間の代替ではなく、処理能力や対応範囲の拡張です。エージェントが情報収集、定型処理、進捗更新などを担ったとしても、目的の設定や重要な判断、結果への説明責任は人が保持します。人間を完全に工程から外すか、すべてを手作業で確認するかという二者択一ではありません。リスクの大きさに応じて、承認が必要な地点を設けることが現実的です。

企業側では「人をループに残す」という方針を、具体的な権限設計へ落とし込む必要があります。エージェントが閲覧できるデータ、外部へ送信できる情報、変更できる項目を明確にし、想定外の結果が出た際の停止担当者も決めておくべきでしょう。出力の確認者が曖昧なままでは、効率化によって処理件数が増えても、誤りや判断の遅れが別の工程に移るだけです。人とエージェントの協働を成立させる鍵は、人間の関与をなくすことではなく、どこで人間が責任を果たすかを明示することにあります。
トークン費用を事業成果へ変えるROI設計
AIエージェントの運用では、利用量に応じたトークン費用が継続的に発生します。ジンマン氏が費用に言及したのは、導入後の評価を技術的な成功だけで終わらせないためです。エージェントが正常に起動し、期待した形式で回答できても、それだけでは投資回収を判断できません。処理にかかる費用と、人が確認・修正する時間を含めた負担が、得られた効果を上回れば、利用範囲を広げるほど経済性が悪化する可能性があります。



ROIを測るには、導入前の基準値が必要です。対象業務に要している時間、処理件数、手戻り、待ち時間などを把握しておかなければ、導入後の変化を説明できません。売上に直接結び付かないバックオフィス業務でも、処理時間の短縮や滞留の減少、担当者が判断業務へ振り向けられた時間などを指標にできます。ただし、測定しやすい指標だけを選び、品質や顧客体験の低下を見落とさない注意も必要です。

費用側にはトークン利用料だけでなく、データ連携、権限設定、出力確認、保守といった運用上の負担も含めて考えるべきでしょう。効果側も「何時間削減できたか」で止めず、その時間が実際に別の価値ある業務へ使われたかを確認します。こうした評価を定期的に行えば、利用量が多いだけのエージェントと、事業に貢献しているエージェントを区別できます。AI活用の規模を競うより、費用と成果の因果関係を追える状態を作ることが、継続投資の判断材料になります。
日本企業が小さく始めるための実装手順
日本企業がmondayの取り組みから取り入れやすいのは、全社規模のイベントそのものではなく、現場を巻き込んで短期間に試作し、継続利用の可否を判断する考え方です。最初から部門全体を自動化しようとすると、対象データ、例外、承認経路が増え、効果を測りにくくなります。入力と出力が明確で、発生頻度が高く、担当者が結果を確認できる工程を一つ選ぶほうが、改善点を特定しやすくなります。



実装時には、次の観点を一組として決めておくと判断がぶれにくくなります。

- 対象業務では、開始条件と完了条件を具体的に定義します。
- 成果指標では、時間、件数、品質、費用のうち何を改善するかを決めます。
- 人の関与では、確認や承認が必要な地点と最終責任者を明確にします。
- 停止条件では、誤りや費用が許容範囲を超えた場合の対応を決めます。
- 継続判断では、試作後も使う条件と、廃止または修正する条件を共有します。

現場担当者には業務知識がありますが、必ずしもエージェント設計やデータ連携の経験があるとは限りません。社内のIT担当者や外部の導入専門家が伴走し、現場の要望を実装可能な単位へ分解する体制が役立ちます。同時に、専門家へ任せ切りにせず、業務責任者が成果指標と運用ルールを管理しなければなりません。試作数を増やすことより、使われ続ける仕組みを選別できる運用を整えることが先です。最初の一歩として、候補業務を一つ選び、現在の処理時間と手戻りを測るところから始めるとよいでしょう。
AIプラットフォーム選定で問うべき導入支援の実力
monday Frontierの設置は、法人向けAI市場において、製品機能と導入サービスが一体化していく可能性を示しています。自律型エージェントは、契約して設定画面を開くだけで成果が確定する製品ではありません。業務の分解、データへの接続、権限管理、評価、改善を繰り返す必要があります。顧客がつまずきやすい場所へ導入エンジニアを配置することは、利用開始までの時間を短くするだけでなく、投資効果を説明できる案件を増やす狙いにもつながると考えられます。



導入企業も、モデルの性能や搭載機能だけでベンダーを比較するのでは不十分でしょう。自社の業務を理解する担当者が付くのか、ボトルネックの発見から支援するのか、稼働後の指標をどう確認するのかを選定時に尋ねる必要があります。短期間の試作ができても、担当者の異動や業務変更に対応できなければ、運用は長続きしません。エージェントを誰が保守し、どのような手順で更新するのかも契約前の確認事項になります。

提供企業にとっても、導入支援は付随的なサービスではなく、製品価値を実現する中核機能になり得ます。ただし、人手をかければよいわけではありません。案件ごとに得た知見を再利用できる設計パターンへ整理し、顧客自身が改善を続けられる状態へ移行させる必要があります。mondayの事例が投げかけているのは、「どのAIが最も多機能か」という問いではなく、「誰が業務変革を実装し、成果に責任を持つのか」という問いです。AIエージェントへの投資を検討する企業は、製品デモを見る際に、導入後の運用体制と測定方法まで具体的に確認することが求められます。
参考情報
Monday.com bets on deployment experts to turn AI agents into real returns

インタビューはmonday.comのElevateイベントで収録されています。掲載媒体のSiliconANGLEは、イベントを中継したtheCUBEがmonday.comの有料メディアパートナーである一方、スポンサーは編集内容を管理していないと開示しています。
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